2026年2月、北イタリアの洗練された都市ミラノと、ユネスコ世界遺産のドロミテ山塊に抱かれたコルティナ・ダンペッツォを中心に開催されたミラノ・コルティナ冬季オリンピックが幕を閉じました。17日間にわたり、氷上と雪上で繰り広げられた熱戦は、日本のスポーツ史に新たな一ページを刻むものとなりました。
日本代表「TEAM JAPAN」が今大会で獲得したメダル総数は24個(金5、銀7、銅12)。
🏆 2026冬季オリンピック メダル獲得数
Milan Cortina 2026
| メダル獲得順位 / 国名 | 🥇 金 | 🥈 銀 | 🥉 銅 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1ノルウェー | 18 | 12 | 11 | 41 |
| 2アメリカ | 12 | 12 | 9 | 33 |
| 3オランダ | 10 | 7 | 3 | 20 |
| 10日本 | 5 | 7 | 12 | 24 |
国別メダルランキングで10位を確保したこの結果は、単なる数字以上の意味を持っています。それは、特定のスター選手に依存する体制から、厚みのある育成システムへと移行し、複数の競技で「世界標準」を確立した日本のウィンタースポーツ界の進化を象徴しています。
本稿では、世界を驚かせた日本勢の躍進を、競技別の深掘りと今後の展望、そして大会の歴史的意義という多角的な視点から総括します。
スノーボード:日本が世界の「中心」となった17日間

今大会、日本代表のメダル獲得において最大のエンジンとなったのは、スノーボード競技です。獲得した5個の金メダルのうち4個がこの競技から誕生した事実は、日本がスノーボード大国として完成の域に達したことを示しています。
男子ハーフパイプ:悲願の金メダルと世代交代の波
男子ハーフパイプでは、長年世界のトップを走り続けながらも五輪の頂点に手が届かなかった戸塚優斗選手が、ついに悲願の金メダルを首にかけました。高さ、難易度、そしてスタイル。
すべてにおいて非の打ち所がないランを披露した彼の姿は、後に続く若手選手たちの大きな道標となりました。
また、山田琉聖選手が銅メダルを獲得したことは、この種目における日本の層の厚さを改めて世界に知らしめてくれました。
パーク種目の席巻:深田、村瀬、木村、そして層の厚さ
スロープスタイルとビッグエアの両種目では、まさに「日本勢の独壇場」となりました。 女子スロープスタイルで金メダルに輝いた深田茉莉選手と、ビッグエアで圧倒的なランを見せて金メダルを獲得した村瀬心椛選手。特に村瀬選手は、スロープスタイルでも銅メダルを獲得し、そのマルチな才能を世界に見せつけました。
男子ビッグエアでは、木村葵来選手が驚異的な回転数と軸の安定感で金メダルを獲得。銀メダルの喜多町凌真選手、スロープスタイル銀の長谷川帝勝選手らと共に、表彰台を日本勢が占拠する勢いを見せました。これらの選手たちの共通点は、SNSや動画プラットフォームを通じて世界の最先端技術をリアルタイムで吸収し、独自のスタイルへと昇華させる「デジタルネイティブ世代」の強さです。
フィギュアスケート:歴史の壁を打ち破った「ペア金」の衝撃

フィギュアスケート大国として知られる日本ですが、これまでは「シングルの国」という印象が強いものでした。しかし、今大会はその常識が根底から覆されました。
ペア種目の歴史的金メダル
日本フィギュアスケート界にとって最大のハイライトは、ペア種目での金メダル獲得です。カップル競技の育成が長年の課題だった日本において、ついに世界の頂点に立つペアが誕生したことは、競技全体のバランスを劇的に変える出来事でした。氷上での一糸乱れぬシンクロ、そして独創的なリフトとスロージャンプは、ジャッジから高い評価を受け、日本のフィギュア界に新しい時代の夜明けを告げました。
シングル勢の安定感と「若き血」の台頭
個人戦では、男子シングルで鍵山優真選手、女子シングルで坂本花織選手が共に銀メダルを獲得。四回転ジャンプの精度だけでなく、プログラム全体の構成美(PCS)で高い評価を得る、成熟した演技を見せました。
特筆すべきは、佐藤駿選手(男子銅)や中井亜美選手(女子銅)といった次世代の選手たちが、初めての五輪という大舞台で臆することなく自らの演技を遂行したことです。
さらに団体戦での銀メダル獲得は、日本が全種目で穴のない最強の布陣を築き上げたことの証明と言えます。
スキージャンプ&フリースタイル:逆境を力に変えたエースたち

気象条件やルールの変更など、外部要因に左右されやすい雪上競技において、日本のエースたちは不屈の精神を見せました。
二階堂蓮、新エースへの完全覚醒
スキージャンプ男子では、二階堂蓮選手が驚異的な安定感を見せました。ノーマルヒルでの銅メダルに続き、ラージヒルでは銀メダルを獲得しました。
K点付近でさらに伸びる飛行曲線は、かつての「日の丸飛行隊」の全盛期を彷彿とさせました。また、混合団体での銅メダル獲得は、男女の協力体制が実を結んだ結果であり、チームジャパンの結束力の象徴となりました。
モーグル・堀島行真の「二階堂」への挑戦
フリースタイルスキー・モーグルでは、堀島行真選手が王者の貫録を見せました。伝統的なモーグル種目での銅メダルに加え、今大会から採用されたデュアルモーグルで銀メダルを獲得。
一対一の極限状態での駆け引き、そして高速のターンは、まさに「雪上の格闘技」にふさわしい迫力でした。
スピードスケート:高木美帆が示した「継承」の形

「氷上のマラソン」とも称される過酷なスピードスケート競技。そこには、一つの時代を築いた女王の姿と、新しい世代へのバトンタッチがありました。
高木美帆、レジェンドの証明
高木美帆選手は、500mと1000mの2種目で銅メダルを獲得。全盛期の圧倒的なスピードに加え、今大会では卓越したレースマネジメント能力を披露しました。
メダルの色以上に、長年世界のトップを維持し続けるその姿勢は、多くの若手選手にとって生きた教材となりました。
団体パシュートが繋いだ絆
女子団体パシュートでの銅メダルは、日本のお家芸としての意地を感じさせるものでした。金メダルを獲得した過去の大会とはメンバーが入れ替わる中で、先頭交代のタイミングやラインの美しさを追求し続ける日本独自のスタイルが、再び表彰台という結果を導き出しました。
ミラノ・コルティナ五輪 日本代表メダル獲得詳細データ
大会の結果を定量的に振り返ることで、日本代表の立ち位置を再確認します。
競技別メダル獲得数ランキング
| 競技カテゴリー | 金 | 銀 | 銅 | 計 | 獲得シェア |
|---|---|---|---|---|---|
| スノーボード | 4 | 2 | 3 | 9 | 37.5% |
| フィギュアスケート | 1 | 3 | 2 | 6 | 25.0% |
| スキージャンプ | 0 | 1 | 3 | 4 | 16.7% |
| スピードスケート | 0 | 0 | 3 | 3 | 12.5% |
| フリースタイルスキー | 0 | 1 | 1 | 2 | 8.3% |
| 総合計 | 5 | 7 | 12 | 24 | 100% |
全メダリスト一覧(種目別)
| メダル | 選手名・チーム | 競技・種目 |
|---|---|---|
| 金 | 戸塚 優斗 | スノーボード 男子ハーフパイプ |
| 金 | 深田 茉莉 | スノーボード 女子スロープスタイル |
| 金 | 村瀬 心椛 | スノーボード 女子ビッグエア |
| 金 | 木村 葵来 | スノーボード 男子ビッグエア |
| 金 | 日本代表 | フィギュアスケート ペア |
| 銀 | 二階堂 蓮 | スキージャンプ 男子ラージヒル個人 |
| 銀 | 長谷川 帝勝 | スノーボード 男子スロープスタイル |
| 銀 | 喜多町 凌真 | スノーボード 男子ビッグエア |
| 銀 | 鍵山 優真 | フィギュアスケート 男子シングル |
| 銀 | 坂本 花織 | フィギュアスケート 女子シングル |
| 銀 | 日本代表 | フィギュアスケート 団体 |
| 銀 | 堀島 行真 | フリースタイルスキー 男子デュアルモーグル |
| 銅 | 丸山 希 | スキージャンプ 女子ノーマルヒル個人 |
| 銅 | 二階堂 蓮 | スキージャンプ 男子ノーマルヒル個人 |
| 銅 | 日本代表 | スキージャンプ 混合団体 |
| 銅 | 小野 光希 | スノーボード 女子ハーフパイプ |
| 銅 | 山田 琉聖 | スノーボード 男子ハーフパイプ |
| 銅 | 村瀬 心椛 | スノーボード 女子スロープスタイル |
| 銅 | 高木 美帆 | スピードスケート 女子500m |
| 銅 | 高木 美帆 | スピードスケート 女子1000m |
| 銅 | 日本代表 | スピードスケート 女子団体パシュート |
| 銅 | 佐藤 駿 | フィギュアスケート 男子シングル |
| 銅 | 中井 亜美 | フィギュアスケート 女子シングル |
| 銅 | 堀島 行真 | フリースタイルスキー 男子モーグル |
日本代表躍進の背景にある3つのポイント
この記事を締めくくるにあたり、なぜ日本代表がこれほどの成果を収めることができたのか、その背景を3つのポイントで分析します。
① 「デジタル・コーチング」の普及
スノーボードやフリースタイル競技において顕著だったのが、SNSやYouTubeを通じた技術共有の速さです。
コーチから教わるだけでなく、世界中のトップ選手の動画をスロー再生で解析し、それを自らのトレーニングに取り入れる。
このデジタルを活用した自己客観視の能力が、日本の若手選手のレベルを底上げしましたといえるのではないでしょうか。
② 種目の「多様化」と「スペシャリスト化」
フィギュアスケートのペア金メダルや、スノーボードでの複数種目メダルは、日本が「得意種目」を広げることに成功したことを意味します。
これまで日本が手薄だった種目に戦略的にリソースを配分した結果、メダルの獲得機会が劇的に増加しました。
③ 「マルチサイクル」のトレーニング
高木美帆選手や堀島行真選手に見られるように、複数の距離や種目(デュアルモーグルなど)に対応できる、身体能力のベースアップが図られました。
これは、単一の動作を繰り返すのではなく、多様な運動刺激を取り入れる最新のスポーツ科学の導入が奏功した結果です。
まとめ|2030年、フランス大会への展望
ミラノ・コルティナ五輪で日本が示した「24個のメダル」という実績は、決して偶然の産物ではありません。それは、選手、コーチ、そして支えるスタッフたちが一体となって積み上げた努力の結晶です。
大会を通じて私たちが目撃したのは、重圧を楽しみ、世界の強豪に敬意を払いつつも、自らの限界に挑み続けるアスリートたちの純粋な姿でした。その姿は、スポーツの枠を超えて、変化の激しい現代社会を生きる私たちに「挑戦し続けることの価値」を教えてくれたように思えます。
4年後、2030年のフランス・ニースおよびフレンチアルプス大会。 ミラノ・コルティナで開花した才能たちが、さらに大きく羽ばたく姿を、私たちは今から心待ちにしています。
感動をありがとう、TEAM JAPAN。


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