2026年ミラノ・コルティナ・ダンペッツォ冬季オリンピックは大会中盤を迎え、女子カーリング予選ラウンド・セッション5が行われた。日本代表(世界ランキング上位のチーム吉村)は、北米の強豪アメリカ合衆国と激突。序盤のリードを守りきれず、後半にアメリカの猛追と決定的なスチールを許し、4-7で敗戦を喫した。これで日本は通算成績を1勝3敗とし、準決勝進出(上位4チーム)に向けて極めて厳しい、まさに「後がない」状況に追い込まれた。
試合展開の詳細分析:勝負を分けた「第8エンド」の攻防

本試合は、日本の後攻(LSFE:Last Stone First End)で幕を開けた。序盤から中盤にかけては、両チームの意図がぶつかり合う緊密な展開となった。
序盤:日本のプラン通りの立ち上がり
第1エンドをブランク(両チーム無得点)に抑えた日本は、第2エンドに1点を先制。第3エンドでアメリカに2点を許すものの、第4エンドで日本はスキップ吉村紗也香が精度の高いドローショットを決め、2点を取り返して3-2と再逆転に成功した。ここまでは、日本のフロントエンド(近江谷、小谷)が作った有利な形をバックエンド(小野寺、吉村)が仕留めるという、理想的なリズムであった。
中盤:アメリカの忍耐と日本の綻び
第5エンド、アメリカは1点を取り3-3の同点に追いつく。ハーフタイムを挟んだ第6エンド、日本は後攻ながらアメリカの厳しいガード配置とハウス内のプレッシャーに苦しみ、1点の失点(スチール)を許す。これで3-4。第7エンドは日本がブランクを選択し、第8エンドに勝負をかける戦略を採った。
終盤:決定打となった第8エンド
この試合のハイライトであり、日本の敗因となったのが第8エンドである。後攻の日本は大量得点、あるいは最低でも同点を目指したが、アメリカのサード、コーリー・ティースとスキップ、タビサ・ピーターソンのショットが完璧に決まり、日本の石を次々と弾き出した。最終投で吉村が狙ったランバック(石を当てて飛ばすショット)がわずかにラインを逸れ、アメリカに痛恨の「3点スチール」を献上。3-7という絶望的な点差がついた。
第9エンドで日本は1点をもぎ取ったが、逆転には至らず、第10エンドの途中でアメリカの勝利を認め、コンセッションを行った。
スタッツから見る敗因と収穫
公式リザルトが示すショット成功率のデータは、この試合の明暗を鮮明に映し出している。
プレイヤー別ショット成功率比較
| プレイヤー | ポジション | 日本 (JPN) | 米国 (USA) |
|---|---|---|---|
| スキップ (S) | 吉村 紗也香 / T. ピーターソン | 69% | 96% |
| サード (V) | 小野寺 佳歩 / C. ティース | 85% | 81% |
| セカンド | 小谷 優奈 / T. ピーターソン | 81% | 90% |
| リード | 近江谷 杏菜 / T. アンダーソン | 99% | 89% |
| チーム合計 | 83% | 89% |
【分析:バックエンドの精度差】
アメリカのスキップ、タビサ・ピーターソンの96%という数字は驚異的である。彼女は18投中、ドローで91%、テイクアウトでは100%の成功率を記録した。対する日本の吉村は69%に留まり、特にチャンスエンドでのミスが響いた形となった。
【収穫:リード近江谷杏菜の驚異的安定感】
特筆すべきは、日本のリード・近江谷杏菜のパフォーマンスである。彼女はこの試合、18投中ミスがほとんどなく、全体の成功率は99%を記録した。特にラストストーンドロー(LSD)でも、日本チームの合計30.3cmのうち、彼女が寄与した部分は大きい。フロントエンドが作った優位性をいかに得点に結びつけるかが、今後のチームの課題となる。
大会全体の状況:予選ラウンド暫定順位(セッション5終了時)
セッション5を終えた時点での順位は以下の通り。
| 順位 | 国名 | 試合数 | 勝 | 敗 | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | スウェーデン | 4 | 4 | 0 | 独走状態 |
| 2 | スイス | 4 | 3 | 1 | 安定圏 |
| 2 | アメリカ | 4 | 3 | 1 | 上昇気流 |
| 4 | 中国 | 3 | 2 | 1 | 消化試合少 |
| 5 | デンマーク | 4 | 2 | 2 | 圏内争い |
| 5 | 韓国 | 4 | 2 | 2 | 圏内争い |
| 7 | イギリス | 3 | 1 | 2 | 踏ん張り所 |
| 8 | カナダ | 4 | 1 | 3 | 苦戦中 |
| 8 | 日本 | 4 | 1 | 3 | 崖っぷち |
| 10 | イタリア | 4 | 0 | 4 | 苦戦中 |
現在、日本はカナダと並び8位タイ。準決勝に進出できるのは上位4チームのみであり、現時点で4位の中国(2勝1敗)や、2敗を守っている韓国・デンマークを追い抜く必要がある。
今後の勝ち抜けシミュレーション:日本代表の「生存戦略」
1勝3敗となった日本代表が予選を突破するための条件は非常に限定的である。
- 残り全勝が絶対条件
予選は全9試合行われる。過去の大会傾向では、5勝4敗がボーダーラインになることが多いが、今大会の上位陣(スウェーデン、スイス)の安定感を考えると、6勝(残り5戦全勝)が準決勝進出の確実なラインとなる。 - 直接対決の重要性
今後、日本は現在上位にいるスウェーデン、スイス、そしてアジアのライバルである韓国、中国との対戦を控えている。これらの直接対決で勝利し、相手の負け数を増やすことが不可欠である。 - DSC(ドローショット・チャレンジ)への備え
勝敗数で複数が並んだ場合、試合前のLSDの平均距離(DSC)で順位が決まる。アメリカ戦での日本のLSDは30.3cmとまずまずの数字だが、これをさらに突き詰め、タイブレーク条件を有利にしておく必要がある。
まとめ:次戦への期待
アメリカ戦の敗因は明らかだ。バックエンドでのショット精度、特に「得点を取り切る一投」の安定感である。しかし、近江谷選手に見られるような高いショット精度や、第4エンドで見せた鮮やかな複数得点など、チームとしてのポテンシャルは依然として高い。
スキップの吉村紗也香は試合後、「悔しい結果だが、ショットの感触自体は悪くない。明日の試合に向けて切り替え、自分たちのカーリングを貫きたい」と前を向いた。
次戦は日本時間15日17:05〜に行われる。
世界の強豪を相手に、チーム吉村の「粘りのカーリング」が再び見られるか。ミラノの氷上で、日本の逆襲が始まることを期待したい。
本レポートは公式記録(Report Created SAT 14 FEB 2026 21:33 / 22:14)に基づき構成されました。


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