夢からビジネスへ変貌する北海道の宇宙開発
かつて「夢物語」として語られてきた宇宙開発は、今、北海道で「ビジネス」へと劇的な変貌を遂げつつあります。国内初の民間ロケットが宇宙空間に到達してから8年、その熱狂ぶりは、先日帯広市で開催された「北海道宇宙サミット」を見れば一目瞭然です。
インターステラテクノロジズ(IST)やレタラといった道内の宇宙ベンチャーが活発にブースを構え、農業への宇宙データ活用や、日本旅行による宇宙ビジネスツアー構想までが語られました。北海道は、日本の宇宙産業の成長拠点として確かな地位を確立しつつあります。
知事も太鼓判!官民一体で進む宇宙ビジネス

このサミットの注目すべき点は、政財界からの熱い視線です。2025年で5回目を迎えたサミットに、初めて鈴木直道知事が姿を見せ、さらに北海道経済連合会の藤井裕会長も来訪。十勝の宇宙開発は、行政の「お墨付き」を得た形となりました。
鈴木知事が「道内企業に参入を促し、サプライチェーンを組むことが地域にとって一番大きな恩恵になる」と語ったように、これは単なる夢の応援ではなく、地域経済に根差した成長ビジネスモデル構築への強い意思を示しています。官民一体となり、宇宙を「稼げる産業」として育てようという機運が高まっています。
わずか6年で実現!ホンダの垂直着陸実験

北海道の熱気を象徴する出来事の一つが、今年6月に大樹町で行われたホンダの再使用ロケット打ち上げ実験です。高度300メートルに達したロケットが、まるで逆再生のように地上に降り立つ垂直着陸の成功は、宇宙業界を大いにざわつかせました。
ロケット開発戦略室の櫻原一雄室長は、ホンダが目指すのは「サステナブルな輸送機」としての再使用ロケットであると語っています。極秘映像から判明した、地上5mでの静止・横移動後の見事な着陸成功は、アメリカのスペースXが13年かけて開発した技術を、ホンダがわずか6年で達成した瞬間でした。これは日本の宇宙輸送技術の革新を予感させる、世界レベルの快挙です。
トヨタも絶賛!IST「ZERO」開発は山場へ

そして、北海道の宇宙開発を牽引するISTの動きも佳境に入っています。
観測ロケット「MOMO」の実績を経て、
現在、人工衛星を軌道に投入する大型ロケット「ZERO」の開発が進行中です。
次の打ち上げ時期について、ISTは
「今年度はロケットエンジンの試験を行っていく。
これがZEROの開発でかなりの山場になる」
と説明。まさに開発の正念場を迎えています。
このベンチャーの挑戦を、人と資金の両面から支援するのがトヨタ自動車です。
元副社長の河合満氏は、ISTの成長ぶりに
「この1年でこの成長はすごい。よくぞここまで」
と最大級の賛辞を送り、日本の「マチ工場」の力を宇宙へと引き上げています。
2026年、そして2028年に向けた期待

大樹町では、新たな発射場「北海道スペースポート」の建設が進んでおり、2026年秋に完成予定です。そして、ISTのZEROロケットは、この新発射場から2028年3月までの打ち上げを目指すことになります。
スペースコタンの小田切義憲社長が語るように、「長きにわたってさまざまな準備や仕込みをしてきたものが今ここにきてやっと芽生え始めた」のです。夢を追いかけ続けた情熱が、今、確かなビジネスとして実を結ぼうとしています。
官民一体、大企業とベンチャー、そして地方が連携する日本の宇宙ビジネスは、来年からさらに大きく動き出すことになります。今後の北海道、そして日本の宇宙開発から目が離せません。



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