南シナ海をめぐる緊張が続く中、米軍がフィリピンにおいて新たな戦略的一歩を踏み出しました。 これまでの「演習のための短期滞在」から、より持続的な「交代制(ローテーション)のプレゼンス」への転換です。この動きの裏側にある、ミサイル配備と中国封じ込めの狙いについて解説します。
米陸軍「ローテーション部隊」の初派遣

米軍の画像・動画サイト「DVIDS」に掲載された情報によると、米陸軍はフィリピンでの「ローテーション展開」を正式に開始しました。
- 部隊名: フィリピン・ローテーション部隊(Army Rotational Force–Philippines / ARF-P)
- 規模: 約50名規模、中佐が指揮
- 開始時期: 2025年7月頃から活動を開始していた模様
米太平洋陸軍のアイザック・テイラー広報部長は、これが「反復的な関与サイクル」から「持続的なプレゼンス」への転換であると述べています。恒久的な基地ではないものの、「常に誰かがそこにいる」状態を作ることで、フィリピン軍との協力を劇的に深める狙いがあります。
核心は「タイフォン・ミサイルシステム」の維持

中国の軍事アナリスト、岳剛(ユー・ガン)氏らは、この部隊の主要な任務は「タイフォン(Typhon)」ミサイルシステムの運用維持にあると指摘しています。
タイフォン・システムとは?
2024年4月に初めてフィリピンに持ち込まれたこのシステムは、以下の強力なミサイルを発射可能です。
- SM-6(スタンダード・ミサイル6): 射程約240km(超音速での迎撃・攻撃が可能)
- トマホーク: 射程約2,500km(対地攻撃用)
ルソン島北部にこれが配備されると、南シナ海、台湾海峡、さらには中国本土の一部までが射程内に入ります。長期展開に伴う要員の交代(リフレッシュ)が必要になったことが、今回の部隊派遣の背景にあると見られています。
「タスクフォース・フィリピン」の始動
この新たな動きを象徴するのが、ピート・ヘグゼス米国防長官らが発表した合同チーム「タスクフォース・フィリピン」の存在です。
- 目的: 「中国の威圧」に対抗し、南シナ海での抑止力を再構築すること
- 役割: 共同計画の策定、演習の調整、有事の際の即応体制の強化
米国にとっては、恒久基地という重いコストを避けつつ、実効的な軍事プレゼンスを示す「賢い投資」といえる戦略です。
なぜ「今」なのか? ―― 2027年問題へのカウントダウン

米比両国は、今年だけで500回を超える共同軍事・安全保障活動を予定しています。この異例のペースの背景には、「2027年」という期限が関係しています。
2027年は、中国人民解放軍が近代化目標を達成する節目であり、一部の専門家は「台湾進攻の準備が整う時期」と見ています。フィリピンは台湾のすぐ南に位置する戦略的要衝であり、ここでの防衛力強化は、有事の際の中共軍の行動を封じ込める決定的な要素となります。
まとめ:地域の安定か、緊張の激化か
フィリピン政府は、自国の防衛力強化のためにこの協力を歓迎していますが、中国側は「南シナ海の緊張を悪化させている」と激しく反発しています。
米陸軍の「静かなる展開」は、南シナ海を「力の空白地帯」にしないという米国の強い意志の表れです。2027年に向けたこの軍事的なチェスゲームが、アジアの平和を維持するのか、あるいは新たな衝突の火種となるのか。今後も注視が必要です。
出典:The Star (AseanPlus News), Military Times, USNI News 等



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