2026年2月、イタリア北部の雄大なアルプスを舞台に、冬季五輪で最も過酷な耐久競技「クロスカントリースキー」が開幕します。
北欧諸国では「国技」として熱狂的な人気を誇り、全競技中、最も高い心肺能力が求められると言われるこのスポーツ。今回は、ミラノ・コルティナ五輪に挑む日本代表の精鋭4名と、立ちはだかる世界の「雪上の帝国」、そして観戦が楽しくなる奥深いルールの世界を深掘りします。
日本代表:世界を驚かせる「持久力」の精鋭4名

今回の日本勢は、ベテランの安定感と若手の勢いが融合した、非常にバランスの良い布陣です。イタリアの高地コースは酸素が薄く、後半の粘りが勝負を分けます。
馬場 直人(男子)
日本クロスカントリー界の絶対的な大黒柱。世界選手権でも上位に食い込む実力を持ち、特に長距離種目でのスタミナは世界トップクラスとも引けを取りません。後半、他の選手が失速する中で順位を上げてくる「粘りの馬場」の走りに期待がかかります。
廣瀬 崚(男子)
北京五輪を経験し、一回り大きく成長した若きエース。欧州のワールドカップを転戦し、世界のトップ集団の中での駆け引きを肌で学んできました。爆発力のあるスケーティングを武器に、強豪勢がひしめく第1集団にどこまで食らいつけるかが鍵です。
山﨑 大翔(男子)
今大会、大きな飛躍が期待される新鋭。陸上競技のような軽やかな走法が特徴で、特に登り坂でのピッチの速さは日本人離れしています。標高の高いイタリアの難コースは、彼のような軽量かつタフな選手に有利に働く可能性があります。
土屋 正恵(女子)
日本女子チームを長年牽引してきた第一人者。安定した走法(テクニック)に定評があり、クラシカル・フリーどちらの種目でも大崩れしない強さがあります。自身の集大成として挑むミラノの舞台で、悲願の入賞を狙います。
国際勢力図:立ちはだかる「雪上の帝国」ノルウェーと北欧勢
クロスカントリーは、歴史的に北欧諸国が圧倒的な支配力を誇ります。彼らにとってスキーは「歩くこと」と同じ日常の一部であり、その層の厚さは他国の追随を許しません。
1. ノルウェー(絶対王者)
ノルウェーのヨハネス・ヘスフロト・クレボ選手は現代クロスカントリー界の「神」と称される絶対王者。圧倒的なスピードを誇るスプリント能力に加え、近年は長距離でも隙がありません。彼がスタートラインに立つだけで、他の選手たちは「銀メダル争い」を意識せざるを得ないほどの存在感です。
2. スウェーデン(女子の最強軍団)
女子カテゴリーではスウェーデンの強さが際立ちます。
特にスプリント種目では、決勝の全レーンがスウェーデン勢で埋まることもあるほど。彼女たちのダイナミックなスケーティングは圧巻です。
3. イタリア(開催国のプライド)
今年の開催国である、イタリアの注目です。
特にフェデリコ・ペレグリノ選手は、地元イタリアの英雄とよばれています。
かつてクレボをスプリントで破った数少ない選手の一人です。地元の大歓声を背に、王者の連覇を阻止する最大の刺客となるでしょう。
ここに注目!観戦を楽しむ3つのポイント

① 「走法」の違いを知る
クロスカントリーには2つの大きなスタイルがあります。
- クラシカル
スキー板を並行に動かし、溝に沿って滑るスタイル。伝統的な美しさと正確なキックが求められます。 - フリー(スケーティング)
スケートのように板をハの字に動かすスタイル。速度が出やすく、ダイナミックな躍動感が魅力です。
② 1秒を左右する「ワックスマン」の戦い
実は、勝敗の3割は「ワックス」で決まると言われます。雪の温度、湿度、硬さに合わせて、専属のワックスマンが数百種類の組み合わせから最適なものを選びます。日本チームの「ワックストラック」での裏方の戦いにも注目です。
③ 高地コースという「見えない敵」
今回の会場は標高が高く、空気が薄いのが特徴です。前半に無理をして飛ばしすぎると、後半に乳酸が溜まって一気に足が止まってしまいます。誰が「溜めて」、どこで「仕掛ける」か。マラソンのような緻密な駆け引きが展開されます。
大会の展望:日本勢の勝機はどこにあるか

男子のリレー種目(4×10km)において、日本は馬場、廣瀬、山﨑といった実力者を揃えており、各選手が最高のパフォーマンスを発揮すれば、世界の強豪国を脅かす「ミラノの奇跡」が起こる可能性も十分にあります。
過酷な自然条件、己の限界に挑む呼吸音、そしてゴール後、雪上に倒れ込む選手たちの姿。
スポーツの原点ともいえる「純粋な力」のぶつかり合いを、ぜひ見守ってください。
まとめ:極限の先に待つ栄光
クロスカントリースキーは、決して華やかな技があるわけではありません。しかし、40km、50kmと滑り続けた先に待つゴールは、人類の精神力の勝利そのものです。
馬場選手をはじめとする日本代表4名が、イタリアの空の下でどんなドラマを見せてくれるのか。2026年、雪上のマラソンから目が離せません!



コメント