2026年2月、イタリアの北部に位置するコルティナ・ダンペッツォ。鋭い氷のチューブを、一人の人間が小さなソリ一枚で駆け抜けます。それが「スケルトン」です。
ソリ競技の中で最もシンプル、かつ最も「狂気」に近いと言われるこの競技。ハンドルもブレーキもない薄い板にうつ伏せになり、顎(あご)の下数センチを氷が流れる世界は、観る者を圧倒します。今回は、2026年大会の舞台となるイタリアの高速コースでの戦いと、唯一の日本代表として悲願のメダルに挑む高橋弘篤選手の展望を掘り下げます。
🇯🇵 日本代表:不屈のベテラン、高橋弘篤選手が出場!
2026年ミラノ・コルティナ五輪において、日本のスケルトン界はその命運をこの男に託しました。
高橋 弘篤(男子シングル)
ソチ、平昌、北京と渡り歩き、日本のスケルトン界を長年支えてきた鉄人。2026年大会、日本代表としてスケルトン種目に出場するのは高橋選手ただ一人です。多くの若手が台頭する中で、彼が代表の座を勝ち取り続けている事実は、その技術と精神力がいかに突出しているかを物語っています。
高橋選手の最大の武器は、長年の経験に裏打ちされた「コースの読み」です。スケルトンは氷の状態や風、気温によって最適なラインが刻一刻と変化します。若さゆえの勢いだけでは攻略できない、イタリアのテクニカルな高速コースにおいて、彼の熟練の技がどう光るかが最大の注目点です。
「これが最後」という覚悟で挑むミラノの地。日本スケルトン界の悲願であるメダル獲得へ、一人のベテランが静かに、しかし熱く燃えています。
国際勢力図:立ちはだかる「スライドの怪物」たち
スケルトンの世界では、伝統的な強豪国に加え、近年は機材開発に巨額を投じるアジア勢の台頭も目立ちます。
1. ドイツ(技術の結晶)
- クリストファー・グロテア: 北京五輪金メダリスト。ミスをしない精密な滑りと、ドイツ製の高性能ランナー(刃)を武器に連覇を狙います。
- 強さの秘密: ドイツは自動車産業の技術をソリに転用しており、空力性能と滑走性能において他国を一歩リードしています。
2. イギリス(メダル請負人)
「なぜかスケルトンだけは強い」と言われるほど、五輪でのメダル獲得率が異常に高いのがイギリスです。徹底した科学的分析と、陸上競技から転身した選手の圧倒的な「プッシュ能力」を組み合わせた戦略は今大会も脅威です。
3. 中国(急成長のアジア勢)
北京五輪でのメダル獲得以降、国家プロジェクトとして強化が加速。高い身体能力を活かしたスタートダッシュは、すでに世界トップレベルにあります。
ここに注目!観戦を楽しむ3つのポイント
スケルトンを初めて観る方でも、ここを押さえればその凄さがわかります。
① 「片手スタート」の技術
ボブスレーが両手で押すのに対し、スケルトンは片手でソリを保持して全力疾走します。低い姿勢のまま加速し、一瞬でソリに飛び乗る「乗り込み」。ここで少しでも姿勢が乱れると、その後の最高時速に致命的な影響を与えます。
② 身体能力による「操縦」
スケルトンにハンドルはありません。選手の肩や膝をわずかに動かし、ソリを微妙に「しならせる」ことで曲がります。時速130km、4G以上の重力がかかるコーナーで、ミリ単位のコントロールを行う繊細さに注目してください。
③ 「恐怖心」との戦い
視線は氷面からわずか数センチ。顎が氷に触れそうな状態で滑り降ります。恐怖で体が硬くなると、ソリが跳ねて失速してしまいます。極限状態の中でいかに「脱力」して氷と同化できるか。これが勝敗を分ける精神性のスポーツなのです。
2026年大会の展望:コルティナの氷を制するのは
ミラノ・コルティナ五輪の会場となるコースは、非常に高速なセクションと、緻密なライン取りが求められる連続コーナーが組み合わさっています。
- 合計4回の合計タイム: 五輪では2日間で計4回滑り、その合計タイムで競います。たった一回のミスが命取りになる、4回完璧に揃える集中力が試されます。
- 高橋選手の勝機: 高速コースではスタートの遅れをライン取りで取り戻す必要があります。ベテラン高橋選手が、世界屈指のパイロット(操縦者)としてどこまでタイムを削り取れるか。
🥇 まとめ:氷上のスリルの先にある勇気
スケルトンは、ただ速いだけではありません。それは、自身の体を「弾丸」にして氷のチューブに飛び込む、アスリートたちの勇気の象徴です。
2026年、イタリアの絶景を背景に行われる「氷上130kmの決闘」。
日本代表・高橋選手の不屈の走りと、世界の怪物たちが繰り広げる異次元のスピードを、ぜひリアルタイムで体感してください!



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